いーすく! #04 スクーリング!

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夏といえば海!海と言えば夏!と相場が決まっている海沿いで育った人間ですが、2011年の夏はソフトボールでした。
 

#4 スクーリング!

 
ネット完結という響きはどこへやら、eスクールにもスクーリング(キャンパスへの登校)があります。厳密にはスクーリングを必須とする科目はすべて選択科目のため回避が可能で、「ネット完結(も可能)」という意味ではキャッチフレーズに傷が付いた訳ではありません。たぶん。
 
今回のスクーリングは「体育Ⅰ」の最終週受講のためのもので、ぶっちゃけ実技です。
 

体育Ⅰ(2011年)授業計画

 
さてここで体育Ⅰ(仮名)の授業計画を簡単にご紹介しておきましょう。これらは基本的に映像での受講です。
 
・ソフトボールの歴史
・ウインドミル投法
・動く速球の投げ方
・変化球の投げ方
・打者に打たれない投げ方
 
序盤から吉原先生(仮名)のご専門であるソフトボールから1ミリも動かない内容に圧倒されます。初回「ソフトボールの歴史」はよいとして、速球の投げ方、変化球の投げ方についてはなかなか習得が難しそうです。なお変化球は70種類ほどあるようです。70種類の投球のためには少なくとも70球を投じなければなりませんから、これは相当な投げ込みが必要です。
 
ちなみに筆者は高校時代、体育の授業で投手を任されて20安打ほど打ちこまれたことがあります。原因は子供の頃に使っていた小さいボールで練習していたため、実戦で使用したボールが全く手に馴染まなかったことと、運動センスのなさです。なにしろ右肩が亜脱臼するクセがあり、思い切り腕を振ると軽く捻挫したようになるので色々とよくありません。しかしその時この講義に出会っていれば、もうちょっと抑えられたかもしれません。
 
講義は中盤に入り、攻守が交代しました。
 
・バッティングの基本
・バント
・投げ方、捕り方
・バッティング上達の方法
・コンディショニング
 
ソフトボールにおいて習得すべきものは投げることだけではありません。打つこと、守ること、試合に臨むために体調を万全に整えること、すべてであります。
 
ちなみに筆者は中学時代、授業内での誤答や成績不十分によるケツバットありの数学の授業を受けていました。クラスの誰もが数学の先生のフルスイングによる痣を尻に作り、バットというのはこういう使い方もなされると学びました。それが今回、思わぬ形で正しいバットの振り方を学ぶことができ、目から鱗が落ちる気分でした。少なくとも、尻はバットに打たれる部位ではなかったのです。
 
講義は終盤に入り、ネタが尽きた、のではなく、10週間に及ぶ自主練習によって生じるであろう疑問に先回りする形でのレクチャーが行われました。
 
・Q&A(1回目)
・Q&A(2回目)
・実技試験
 
そして最終コマにおいて、これらすべてをきちんと習得しているかを確かめるための実技試験が開催されます。当然ながら、このスクーリングへ出席しなければ単位は来ないと考えるのが自然です。場所はeスクール事務局があるW大所沢キャンパスです。あ、所沢って書いちゃった。
 

いざ所沢へ

 
埼玉県所沢市。タレント:所ジョージ氏の「所」の由来となった地名と言われ、プロ野球チーム:埼玉西武ライオンズの本拠地「西武ドーム」があることでも有名です。今回は「W大所沢キャンパス」までの距離感を公平な視点でお伝えすべく、都心をスタート地点と仮定し、新幹線にて到着した東京駅からW大所沢キャンパスまでの簡単な道程について紹介したいと思います。
 
1.東京駅から丸ノ内線で池袋へ
新幹線を降りて在来線への乗り換え改札を通過すると、利用客でごった返す丸の内口と八重洲口を結ぶ大きな通路が目に入ります。東京メトロ丸ノ内線は丸の内口の地下に位置するため、まずは丸の内口方面へと歩きます。八重洲口の改札を出てしまうと色々と面倒なので気をつけてください。ここで赤レンガで有名な丸の内駅舎を見るために外に出ても良いですが、全体をカメラに収めたくなって遠ざかり過ぎると場合によっては二重橋前駅(千代田線)に行ってしまうので気をつけてください。丸ノ内線では池袋行きに乗車し、わずか16分で池袋に到着します。
 
2.池袋駅から西武池袋線で小手指へ
小手指(こてさし)という見慣れない駅名が出てきましたが、まずは丸ノ内線から西武池袋線へ乗り換えてください。ここで気をつけて欲しいのは、乗り換えるべきは東口にある西武池袋線であって、西口にある東武東上線ではないということです。ここを間違えると小手指には永久にたどり着くことができなくなりますので気をつけてください。それと調子に乗って丸ノ内線以外の地下鉄を使おうとか、余計なことを考えてはいけません。確かに副都心線と有楽町線のどちらも西武池袋線に乗り入れていますが、実は線内止まりの電車や東武東上線への乗り入れ電車の方が多いのです。気をつけてください。どうにかして西武池袋線ホームへたどり着いたら、今度は急行もしくは快速「飯能行き」または「小手指行き」に乗ってください。5番線あるいは3番線、もしかしたら7番線や2番線から発着しますので気をつけてください。各駅停車では相当時間がかかりますし、そもそも小手指までたどり着かないものが多いです。あと「西武球場前行き」や「豊島園行き」は、行き先こそ楽しげですが案の定小手指にたどり着かないので気をつけてください。それと特急は少しだけ速いですが、途中停車駅の所沢で乗り換える必要があり、しかも所沢の次は小手指を過ぎた入間市まで止まりませんので気をつけてください。池袋から小手指まで、急行でわずか30分程度です。なお準急に乗ると練馬駅で急行より速い「快速急行」に乗り継げる場合がありますが、よく遅れるので気をつけてください。最悪の場合、練馬駅で快速急行を待つ→来ない→なぜか乗ってきた準急が先に発車→練馬駅置き去り、という謎の遭難現象に見舞われることもあります。とにかく気をつけてください。
 
3.小手指駅から学バスで所沢キャンパスへ
めでたく小手指駅に到着したら、小手指駅北口または南口から発車する大学直通バスに乗ってください。ただしバスは時間帯によって北口もしくは南口のどちらかからしか発着しないので、気をつけてください。大学関係者以外は乗車禁止ですが、大学に用のある人間は乗って大丈夫のようです。というより道中ノンストップなので、他の場所に用のある人が乗っても大変な目に遭うだけです。バスの塗装は分かりやすいエンジ色と、いかにも西武バスの色をした2種類が混在していますが、行先表示が「W大学専用」などとなっていればそれが直通バスです。運賃はありがたいことに無料です。一方同じルートには市営バスがあり、南口から「小手02系統 早稲田大学行き」が出ています。これは終点がW大所沢キャンパスとなっていますので分かりやすいですが、お金が必要となるので気をつけてください。バスも面倒ということであれば、タクシーで乗り付けるのもアリです。お金はかかります。いずれのルートでもわずか20~30分程度です。
 
しめておよそ1時間強。いや~簡単ですね。
 

W大所沢キャンパス

 
小旅行の果てにたどり着くことができる「W大所沢キャンパス」は、豊かな自然と2つの大きな運動施設(陸上競技場と野球場)が目を惹くキャンパスです。今回の体育Ⅰのスクーリングは、この野球場で行われるようです。
 
バスを降りると、多くの人は両運動施設の間に架かる歩道橋に吸い込まれていきます。歩道橋と書きましたが、バス降車口からの勾配差がないため、実感としてはただの歩道です。歩道の両脇を背の高い常緑樹が取り囲み、木のトンネルを作り出しています。
 
トンネルを抜けるとそこは雪のように白い壁のある建物が視界に入り、おそらくこれがメインの建物なのだろうという程度のことは初訪者にも分かるようになっています。こういった場所はくまなく探索してみるのが筆者の性分ですが、あまり変な場所に行くと(広くて)戻れなくなるかもしれないという危機感が少しだけ芽生えたため、ひとまずスクーリング受講者の集合場所である教室へと向かいました。
 

スクーリング、始まる

 
今回のスクーリングは土日の2日間にわたって開講される大がかりなものでした。そのため筆者も、同じ関東地方在住ながら泊まりがけで臨むことになりました。なにしろ聞きしに勝る遠さでしたので、泊まりがけという判断は正解でした。
 
さて、スクーリングにおいて恐れていたことがありました。それは夏の暑さです。元々筆者はバリバリの夏生まれなのですが、日中40度に迫る暑さに見舞われた2002年夏ナゴヤドームでのライブ鑑賞において開演直前に熱中症を発症して以来、極端な暑さを恐れる身体になってしまいました。加えて今年からの座学の日々とあって、運動不足が服を着て歩いているような虚弱体質人間となっていました。少なくとも足腰は相当弱っていたと思われます。そこへ折からの真夏の厳しい陽射しに露天で曝され続けたとあれば、救急車召喚は確実です。
 
しかし先述のようにこのスクーリングを受講しなければ単位はもらえません。せっかく10回以上の受講を重ねて(頭だけでも)ソフトボールのウインドミル投法やバッティングを習得したというのに、です。世知辛いどころの話ではありません。ここはひとつ、グラウンドにかじりついてでも受講を全うしなければなりません。帽子。熱中症予防グッズ。最近あんまり履いていなかったシューズ。軟式野球用グローブ。最悪の事態を避けるための最大限の準備は行いました。
 
いざ、勝負です!
 

スクーリング1日目(薄曇り)

 
心配した天候は小雨に近い薄曇りでした。そのためか屋外での実技は予想していたものより相当に軽いメニューで終わりました。代わりに、集合場所であった教室にて吉原先生による生レクチャーが行われ、1日目が終了となりました。よく考えると、これが大学のライブの講義の初体験でした。
 
とにもかくにも、これほどまでに悪天候を(内心)喜んだのはいつの運動会以来でしょうか。ちなみに1日目のスクーリングは午後からでしたが、2日目は朝からとなっていましたので、主に午後にかかりやすい熱中症のリスクはこれで大きく下がったといえるでしょう。神はいたのです!
 
さて今回の体育Ⅰは、数少ない旧知の同期(B氏、C氏、D氏)や科目登録会にて知り合った多くの学友も履修していました。これは通学制でもそうですが、eスクールにおいても他者が何を履修したかは当人に訊ねるか、履修後に同じ科目内の同じクラスで邂逅する以外にありません。そのため個人的予想より遥かに多くの学友に会えた、という実感がありました。
 
身の危険から解放され、頼りない絆を再確認できるとあっては、さすがの筆者もテンションが上がるというものです。1日目の終わりということで、かなり多くの履修者が所沢市内まで一団で移動しました。雨は夜になっても延々と降り続いていましたが、悪名高き埼玉の暑さを遮る救世主であることを考えると邪険にはできません。首尾良く鬨の声を上げられる店が見つかり、大団円のお疲れさま会となりました。
 

1日目の夜:お疲れさま会@プロペ通り

 
会場となった所沢駅近くの居酒屋は「プロペ通り」という謎の名前がついた繁華街の中にありました。お疲れさま会はeスクール入学以来最大の盛り上がり(当社比)だったと思います。お酒はこの頃からあまり飲んでいませんでした。や、少し飲んだかもしれませんが、酔っぱらうほどではなかったはずです。十分に親交を深め、会がお開きになった後、筆者含め同じホテルを取っていた一団はプロペ通りから少し離れた場所にあるこの日の宿泊地、駅前唯一のビジネスホテル「所沢Pホテル」に向かいました。間違いなく、チェックインしたところまでは筆者は元気でした。
 

2日目の朝:暗転

 
いつから気持ち悪くなっていたのかはわかりません。寝付きが悪いな、と気楽に構えていたのは束の間、気がついた時には猛烈な頭痛と吐き気を自覚していました。子供の頃から「どう?乗り物酔いしてない?気持ち悪くなってない?」と確かめられると気持ち悪くなるタイプでしたが、このときはさすがに、おかしくなっていたのはこちらだとすぐ分かるほどでした。
 
なにしろ理由が理解できませんでした。熱中症にはなっていないはずなのに。ほとんど飲んでいないはずなのに。結局「朝」と言える時間まで一切眠りに落ちることはなく、最悪な気分と体調で2日目を迎えることになりました。お詫びして訂正します。神はいませんでした。少なくとも所沢には。
 
なおホテルの名誉のために付記しておきますと、Pホテルでは何も飲食をしていない(※朝食は摂取不能のためスルー)ので、Pホテルで何かにあたったということはあり得ません。となると疑惑はその前の居酒屋となりますが、少なくとも同宿の学友はみな元気よくホテルの朝御飯を食べていましたので、深刻な被害が広がっているということもなさそうです。なにより、不調になる理由が筆者にはあり過ぎました。運動不足です。この数ヶ月、ろくに遠出も運動もしていなかった人間がいきなり所沢まで赴いてソフトボールをプレーしたとあっては、何かがおかしくなるのも必然です。想定していた最悪の事態は最悪でもなかったことを思い知った朝でした。
 

スクーリング2日目(小雨)

 
よく学バスの中で吐かなかったなと思うほどの強烈な不調の中、単位だけを目指して筆者はキャンパスを再訪しました。出席しなければ単位が来ない、と考えての無茶でした。2日目のメニューは1日目のレクチャーを踏まえた試合でした。
 
かくいう筆者はこの記事から遡ること8年ほど前に「大阪ドーム(当時)で草野球をやりたい人集まれ」というネット上の企画に乗り、使用料金が最も安い午前2時から草野球を始めるという狂気のイベントに参加したことがありますが、その数千倍はしんどかったと思います。むしろ今回もいっそ午前2時からスクーリング2日目をやってくれていれば、元気な状態で受講できたかもしれません。
 
ただ幸いにも天候は、昨日以上にまとわりつく霧雨が周囲を覆う絶好の雨模様でした。一度は見捨てたはずの神が「やりすぎたかな?」と気を取り直したのでしょう。濡れそぼった芝生の上を、昨日より暑くないはずなのにフラフラと彷徨う筆者。ご存知の方も多いと思いますが、行き過ぎた湿気は何一つ身体を楽にしてくれません。
 
あまりの緩慢な動きに業を煮やしたのか、外野で守っていた荒らしの大王B氏は「ちゃんとやれよー」といった檄を小声で囁いてきました。しかし「それ以上言うと吐くぞ!」という禍々しい殺気に少し気づいてくれたのか、以後は何も言わなくなりました。その調子で、荒らすのも止めてくれないかな。
 
ちなみにこのスクーリング、実際には離脱者対策として休憩用テントも用意されていました。例えばこのスクーリングに参加していたC氏は試合中にどこかを痛めたらしく、以来ずっとテントで見学していました。いやもう、明らかに僕もそこに行くべき人じゃないかな? と最初から思っていました。
 
しかしそんな機転が利くのは、頭がきちんと回っている場合のみなのですね。あそこ(テント)に入ったら単位は来ない! だってコンディショニングできてないことになっちゃうから! Cさん、残念だったな! という純朴な強迫観念と体調不良の板挟みが、最後までグラウンドで筆者を頑張らせたのでした。
 
ちなみにC氏に単位は来たそうです。冷静に考えると、2日間のスクーリングメニューを個人練習と試合のみ成り立たせてくれた吉原先生は、見た目も心も優しい方です。そんな慈悲深い先生が「体調悪い」と申告してきた学生に対し「コンディショニング失格だ!落第!ケツバット!」なんて言うでしょうか。神は居て、しかし筆者が愚かで、神に語りかけていなかっただけなのです・・・
 
試合は気がついたら終了していました。どちらが勝ったとか負けたとか、全く覚えていません。そもそも勝ち負けは最初から関係がなかったようです。最後に教室に戻り、先生と「体育Ⅰ」を担当した教育コーチと共に記念撮影を行い、スクーリングはめでたく終了となりました。記念写真として残された、筆者の引きつった笑顔とよろける寸前のように斜めになった身体が、身の内の激闘を今に伝えています。
 

アディオス、W大所沢キャンパス

 
所沢キャンパス。事前に相当な対策を講じ、覚悟を決めていたにも関わらず、その実力は本物でした。まず遠い。第一に東京から遠いし、第二に小手指からも遠い。おまけに時間差で気持ち悪くなるし、踏んだり蹴ったりとはまさにこのことです。
 
けれど長旅を終えてバスから降りた時に出迎えてくれた、バイク事故に遭った瞬間のような銅像と緑が美しいキャンパスの景観は、絶望的な不調という十字架を背負わされた状態でなお、佳き思い出として筆者の中に残ったのでした。あるいはきっとここには、また何か用があるに違いない。そんな親近感に似た予感を、うっすらと感じていたのかもしれません。銅像よ。その時、また会いに来るからね。
 
次回、eスクールのキーパーソン「コーチ」を紹介します。