いーすく! #09 演習!

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どうしてこのゼミに入ろうと思ったのですか。卒論はどんなテーマで考えていますか。家はどこですか。通うのって大変じゃないですか。

 
一年後に後輩が出来たときに備えて、質問を考えておかないとですよ。
 

#9 演習!

 
筆者が配属された上野ゼミはスクーリング必須、ということは前々回書きました。ここからは筆者がどうやってゼミ1年目(スクーリング)を乗り越えていったかについて書き連ねることにします。
 

ゼミの運営パターン

 
ゼミの紹介回で書きそびれましたので、まずはゼミの運営形式のパターン化を試みたいと思います。
 
パターンはわかりません。
 
いきなりさじを投げてしまいました。実際、ゼミというのはゼミ長(=教員)の研究機関でもあるため、活動内容が完全にオープンというケースは稀です。正確にはどんな方針で運営されているかとか、週のいつ活動しているかなどの基本情報はさすがに分かりますが、活動の中身に関しては門外不出ということが少なくありません。中身が門外に出るときは、研究が発表されたときか、物盗りにでも遭ったときだけです。
 
加えて研究の中身は専門領域の事情に最適化されるため、極論すれば二つとして同じゼミはない、と推察されます。教員間に師弟関係がある場合や、領域内の大きな合意事項によって活動を共にするケースはあるのですが、それも採用するかどうかを最終的に決めているのはそれぞれのゼミ長(教員)です。領域の事情に寄せつつ、秘匿性の高い内容を取り扱う。そのうえ「人間科学」領域は様々な領域の専門家が同居していますから、ゼミの多様性度合いは国内屈指かもしれません。
 
こんな状況ですから、通信のゼミというものもパターンを見出すことは困難です。それこそ負荷がどうこう、という話を始めたら、そもそも比較可能な情報からして多くないので、負荷の多少に関する実感が正しいのかすらわからないのです。
 
こういった閉鎖的なコミュニティーは時として不正やハラスメントの温床になってしまうわけですが、本質的に開放しようがない以上、事前の対策にも限界があります。あえて安心できることを経験則から書きますと、ほとんどすべての先生は指導や研究に真摯に取り組んでいますので、入る前から警戒心バリバリで臨む必要はないです。頼りないアドバイスになるのは申し訳ないですが、そういうことは被害に遭ってから考えても(たぶん)間に合います。
 
ただこれでは何の説明にもなっていないので、筆者のゼミ1年目の情報を交えながら、「eスクールゼミの運営パターン」という論点に絞ってここでは説明していきます。
 

eスクールゼミの運営パターン(筆者の知る限り)

 
上野ゼミのスクーリング初回は2013年4月、都内で行われました。所沢ではなく都内です。配属決定後のメール打ち合わせにて、他の同期学生の動向も踏まえて決定されました。これだけで時間にして2時間、交通費でも1000円前後セーブされました。
 
<開講場所パターン>
eスクールにおいて第一に気になるのが開講場所です。ここではオンラインとオフライン(スクーリング)を取り混ぜながら場合分けしています。
 
①オンライン型
eスクールらしく、ゼミもオンラインで完結させるパターンです。らしく、と書きましたが、こうでないと困る方も多いのではないかと思います。
 
②スクーリング(任意の場所)型
対面のゼミ形式にこだわるも、学生の事情などに応じて開催場所を所沢キャンパス以外とするパターンです。学生の多くが、なにしろ所沢は距離があるので・・・という思いを共有すれば、教員も考慮してこのような対応を取ることがあるようです。
 
③スクーリング(@所沢キャンパス)型
しかし最優先としなければならないのは教員の予定です。ゼミを定期的に設定する場合、所沢での教務がある先生は所沢キャンパスから動けない、ということは大いにあり得ます。そうなると学生側も腹を括るしかありません。
 
実際の運用では、①~③が事情に応じて採用されるということがほとんどではないでしょうか。しかし当初から「①オンライン型」を宣言していたゼミが、蓋を開けたら毎回「③所沢キャンパスまで来い!」というのはいかにも酷い話ですから、①メインのゼミは②や③の回数はあまり多くならないと考えてよさそうです。一方で「③所沢キャンパス」を基準としながら、随所に「①オンライン型」を取り入れるということは自然にあり得る話で、つまり「スクーリングがある方はオンラインもあり得るが、逆はあまりない」という傾向が導かれそうです。
 
上野ゼミのスクーリングの開講形式は、通学と連携しない、通信として独立したものとのことでした。そのため参加者は先生、教育コーチ、そしてゼミに配属された学生数名となります。この陣容で、1年間の演習に取り組みます。
 
<開講形式パターン>
eスクール生として場所に続いて気になるのは、通学制との関係性です。基本的に通学制は週に一度のペースでゼミが開講されていますが、eスクールでそのペースはなかなかに過酷なものとなることが想像できます。しかし月4回開講されているゼミのうち、1回ないしは2回だけ参加するというのは、それはそれで話題についていけるのか不安になるところです。
 
①eスクール独立型(通学と関連しない)
上述の懸念を払拭してくれる形式が、eスクールとして別個にゼミが開講されるというパターンです。正直、すべてのゼミがこの方式であれば(こうしなければならないというルールでもあれば)、この部分は類型化をする必要がありません。
 
②eスクール・通学同一型(通学制に吸収される)
しかし学生の人数や実習を重視するゼミの場合、分けての開催が困難です。そうなると人数比からして、eスクールが通学ゼミに吸収される形で同居することが避けられません。出席の頻度についてはなんとも言えませんが、通学制と同様の出席態度を求められることを完全に否定することは難しいでしょう。
 
③eスクール、通学ゼミ一部参加型
こちらは①と②の良いところ取りで、基本的にはeスクールとして独立したゼミを開講しつつ、要所でeスクール生も通学ゼミに合流するというパターンです。これには通学ゼミで行われる内容の中に、単発回で終わるワークショップのようなものが随所に挿入されている場合が多いと推測されます。言い換えれば、そうした一話完結型ではなく連綿と同じミッションに取り組むことを主とするゼミでは、なかなか起こりにくい開講形式です。
 
上野ゼミの日程は、先生、教育コーチ、学生の合議で決定されることになりました。単純に、全員の都合がつく日程に入れていくということです。そのためある程度の目安はありますが、基本的には曜日に縛られない形での開講となります。
 
<開講周期パターン>
場所と形式が見えてきたところで、次にケアしなければならないのがゼミ開講周期です。ここでは身体的負荷が低そうなものから順に紹介しています。
 
①1~2ヶ月に一度のペース、不定期開講型
eスクールゼミにおける学生の招集の難しさを考慮し、月に一度程度集結するというパターンです。春・秋学期合計で10回前後の開講となります。その間、学生はゼミで提示された課題に取り組んだり、本コラムの今後の回で紹介予定の卒業研究に関するタスクをこなしながら過ごします。このパターンにおける具体的な開催期日は、先生や学生の都合によってその都度決定されることがほとんどと推察されます。なお理屈の上では「月一で定期開講(例:毎月の第4月曜日)」ということもあり得ますが、かなりのインターバルなのでここではすべて「不定期」と分類しています。
 
②2週間に一度(月に2回)程度のペース、不定期開講型
主にオンライン、オフライン(スクーリング)を取り混ぜた形式で行われうる開講形式です。スクーリングは月に一度程度だけれど、その隙間をオンラインで埋めるというイメージです。特に演習では課題が出題されますから、その中間チェックを行うために「2週間」というインターバルは適切と思えます。ただし先生の都合によって、月に2回の内のどちらかがスキップされることもある程度にはフレキシブルです。
 
③2週間に一度(月に2回)のペース、定期開講型
こちらは厳然と、隔週ペースの決まった曜日(例えば通学ゼミの開講される曜日)にゼミが設定されるパターンです。ゼミとしてはeスクールと通学の歩調を合わせたいという意向を持っているけれど、eスクール生の事情にも配慮したい・・・という先生側の親心があると、結果としてこの頻度に落ち着くと考えられます。
 
④1週間に一度(月に4回)のペース、定期開講型
こちらは完全に通学制に取り込まれたeスクールゼミのパターンです。年間のゼミ回数は30回にのぼります。気分は完全に通学生です。あるいは通学制と同じ熱意でeスクールゼミを運営したい、という熱い先生の場合、曜日をずらしてそれぞれのゼミを開講するということもあり得ます。
 
筆者が配属された年の上野ゼミは、筆者含めて合計3名が配属されました。しかし上級生は昨年度を以て卒業されたとのことで、学生は上級学年のいない状態の3名のみとなりました。
 
<学生数パターン>
そして蓋を開けてみなければ分からない要素に、学生数(主に同期の人数)があります。意外にもこの人数の差が、指導内容や演習の充実度に影響を与えます。
 
①マンツーマン型
eスクールは学生の全体人数が少ないため、ゼミ定員も少なく、そもそも配属希望者も少ないことが一般的です。更に上級学年がいない状態で配属されると、学生1名のみという贅沢なことになります。狭き門として名高い東京芸大の指揮科ですら学年ごとの定員は2名ですから、学生としては嬉しい誤算かもしれません。先生、教育コーチのすべての熱量が学生に注がれるため休まる暇がないというのが難点と言えば難点ですが、一匹として生きてきたeスクール生には、むしろ望むところかもしれません。
 
②学生2~3名(別学年)型
こちらはより一般的に、毎年1~2名の配属があるゼミの標準的な陣容です。先生、教育コーチに加えて上級生がいるので、孤独感を感じることは①より少ないという利点があります。さすがに先生や教育コーチの熱意をすべて我が物とすることは難しいものの、適度に刺激し合いながら学べるという意味ではeスクールゼミとして最適なサイズ感といえます。
 
③学生2~3名(同学年)型
しかし稀に、複数の学生の学年が同じということが起こりえます。こうなると頼れる上級生がいない分、配属初年度の複数学生の心境は「①マンツーマン型」の中の贅沢成分が削ぎ落とされた状態となります。とはいえ複数名が居るというメリットは課題遂行において計り知れず、ディスカッションも(単独受講よりは)実のあるものとなります。ちなみに筆者が配属された時期の上野ゼミは前にも後にも配属者がいなかったため、ずっとこれでした。質問を考えた意味はなかったです。
 
④学生4名以上型
人気のゼミには安定して定員一杯の学生が配属されます。そのためeスクールといえど4名以上のまとまった勢力が構成され、通学制と遜色ない形の課題の提示も可能となります。トレードオフとして、学生1人あたりの先生占有時間が下がることになりますが、教育コーチや大学院生(後述)にも相応の役割を与えることで、そのマイナスは埋め合わせられます。
 
一方で上野ゼミの指導側の陣容としては、先生と教育コーチのみとなりました。これはeスクールゼミが通学ゼミとは分離されて開講されること、場所も異なることなどが大きな要因です。
 
<指導側人数パターン>
学生の人数と同様に意外と読めないのが、指導側の人数です。この人数を直接的に左右するのは大学院生の存在です。
 
①教員+教育コーチ型(総勢2名)
eスクールでは標準的なスタイルです。コラム第5回において「教育コーチは教員に準ずる働きをみせていた」と書きましたが、ゼミの教育コーチもそれは同じです。学生数が少ないほど、指導側人数もこれで十分です。なお教育コーチが配属されないケースもありそうですが、筆者は把握していません。
 
②教員+教育コーチ+大学院生型(総勢3名以上)
eスクールではお馴染みの陣容に、大学院生が付随するパターンです。そもそも教育コーチの資格は「修士学位」ですから、博士課程の大学院生が教育コーチを担当することがあり得ます。加えてeスクールゼミが通学ゼミと近接して開講される場合、eスクールゼミに教育コーチ役ではない大学院生がオブザーバー的に参加することや、そもそも教育コーチが複数名任命されるという事例も考えられます。こうした措置が取られるのは主にeスクールゼミの学生数が多い場合です。
 
上野ゼミのゼミのカリキュラムは「1年目演習、2年目卒業研究」となりました。演習ではゼミ開講ごとに出題、発表(提出)を繰り返し、最後に卒業研究へと繋がるミニ論文を提出する運びです。
 
<演習形式パターン>
最後に、演習そのものの形式についても大まかに2パターンがあります。
 
①演習と卒業研究が独立している
1年目は演習と称し、主には卒業研究に取り組むためのスキル習得を目的とした課題を課せられ、2年目(最終学年)の春より卒業研究を本格化させるパターンです。両者は必ずしも完全に分断されている訳ではないのですが、卒業研究のテーマとの関連が薄いスキルに関する課題でも課せられることが大きな違いです。
 
②1年目から卒業研究に入る
eスクールゼミの場合、開講回数などの制約から、事実上1年目から卒業論文に着手することを選択するゼミも少なくないようです。科目名と内容が異なるとも言えますが、実際に学生が取り組む内容は「卒業論文執筆のためのスキル習得+執筆」ですから、ほとんど変わらないと考えることもできます。強いて言えば②の方が、卒業研究に即したスキル”のみ”を習得する訳で、無駄がないように思える反面、学生として会得しておきたいスタンダードなスキルを取りこぼす恐れがあることに留意しなければなりません。
 
以上の項目を積の法則に基づいてすべて掛け合わせると、
 
3*3*4*4*2*2=576通り
 
のeスクールゼミ運営パターンがあることが分かります。ここに演習の内容や進め方に関する個性、例えば課題の提出形式がレポートなのかプレゼンなのかその両方なのか、夏休みや冬休みも稼働するのか、演習の締めくくりとして長尺のレポート(ミニ論文)を課すのか何もないのか、なども勘案すると・・・
 
ね。パターンなんてないんですよ。
 
でもゼミ配属面談では、希望するゼミが上記のどのパターンなのか把握するとよいかもですよ。
 

いよいよ演習に突入・・・?

 
はてさて、開講形式だけでだいぶ文字数を費やしてしまいました。いよいよここから、演習に関する本格的な説明を・・・
 
と思ったところで、忘れていました。そうなんです。ゼミって活動内容がオープンってことがあんまりないんです。ですのであんまり書くのは面白くないかなって。
 
いや、そここそを知りたいんだけど、とな?
 
ええいもう、いい子だから黙ってて。
 
なにより、演習に入ると思っていた矢先の2013年の5月。上野先生からとある提案があったことも理由にしたいと思います。
 
「合同ゼミ、出ますか?」
 
 
この続きは次回。