いんせい!! #01 M1!!

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地下鉄駅の階段を上がって曲がりくねった道を記念会堂へと急ぎます。見上げた空は少しの綿雲を残した程度に控えめな快晴です。2015年4月2日。大学院入学式です。ここから大学院生としての日常が始まります。
 

#01 M1!!

 
筆者が社会人学生としてeスクールへの入学を果たしたのは2011年のやはり桜が美しい季節でした。有意義な知識とかけがえのない友人に恵まれながら4年間で積み上げた単位は126。スクーリングもレポートラッシュも果てなき卒論ディスカッションも今となっては良き経験です。ただそれを思い出と称するには記憶の粗熱が冷め切っていない中で大学院入学式はやってきたのでした。
 
その前に。筆者はこの春より早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程(上野研究室(仮名、以降「上野ゼミ」とも表記))に入学することになりました。入学式の筆者は感無量でした。なにしろこれが筆者にとって初となる「大学の入学式」なのですから。何の問題もなく式が執り行われたほぼすべての入学年の皆さんには理解できない感情かもしれません。これだけでももう大学院生になった目的の何%かは果たされたような気になりました。
 
それにしても大学院生ですよ大学院生。もう一回言いますね。大学生ではなく大学院生です。eスクールではおよそ2割の学生が大学院に進学するとのことですがその2割です。子供の頃に夢見た自分の将来において「大学生」はまあまあ想定内だった気がします。しかし「大学院生」はさすがにあまり想像できないものでした。それが一体なにがどうして。いやはやすごいところまで来てしまいましたよ。我が人生まさに春爛漫なり!
 
おっと。本コラム開始から僅か数カラムにして貴重な読者を失うところでした。頭を冷やす意味で時計の針を少し戻すことにします。
 
そもそもどうして大学院進学を決意したのか。単純なる興味でした。eスクールでの学修はすでにかけがえのない財産となっていました。しかし一方でその財産をもっと生かせる場がないかと考えたときに浮上したのがこの選択肢でした。まんまと沼にハマったともいえます。ありがたいことに周囲の理解にも恵まれました。思い立ったが吉日とはいえ決断は1年前の2014年春に行いました。諸々の事情が迫っていたからです。卒論もろくに用意できていない状況でよく決断したなと今になって思います。
 
諸々の事情とはいわゆる推薦入試(内部進学)です。一般的に内部進学は決して難しいものではないとされています。確かにそれは一理あります。しかしだからといって楽であるということは決してありませんでした。受験には研究計画書の提出が求められました。大学院の門を叩くからにはその裡に明確な研究構想が存在しなければならないのです。しかしなにしろ卒論に取りかかっていた最中ですから相当に苦心しました。絵に描いた餅を使った創作料理のレシピを用立てるようなものです。ほんとよく決断したなと今になって思います。
 
そしてこれまた当然ながら面接も行われました。さすがに緊張しました。月並みながら前泊のホテルではほとんど眠れませんでした。なので何を喋ったかあまり覚えていません。人前で喋るのはむしろ好物な性分にもかかわらず緊張に飲まれる自分をメタ認知的視点で驚いていました。ですので面接での緊張が辛いという方には「完全に緊張しないことはあり得ないので自然に緊張できるようにしよう」という役に立たないアドバイスを捧げます。
 
閑話休題。気苦労の甲斐あってか結果は合格でした。しかし実際の大学院入学には当期(1年間)での卒業研究の合格が前提となります。まあそりゃこれも当然で「大学院に合格したけれど卒論は3年かけるね」というのもおかしな話です。大学院で研究する目処を説明したくせに卒論ができてないってなかなか痛快なパラドックスです。
 
加えて推薦での大学院受験のチャンスは在学中一度だけと決まっていました。つまり当期での卒論が不合格となれば大学院進学が取り消されるうえに再度の推薦の機会も与えられないのです。This is all or nothing。賽を投げていました。このような経緯によって筆者には早い段階で「絶対に(卒論を)一発合格しなければいけない」というプレッシャーがのしかかりました。ほんともうよく決断しやがったなと。
 
結論として筆者はなんとか卒業に至ったのでした。卒論執筆における悪戦苦闘のごく一部は「いーすく!」に記していますので適宜ご参照ください。なので学会への大会発表も任意ではありましたが院生としては必須でした。その割には泡喰ったように梗概に取り組んでいたわけですがまあそれはご愛敬と言うことで・・・
 

学部卒業式

 
2015年3月26日。W大eスクール生を含んだ人間科学部すべての当期卒業生が都の西北たる早稲田キャンパス(通称:本キャン)に集いました。今こそ母校からの旅立ちを迎えるときです。卒業証書にあたる学位記のカバーはスクールカラーの臙脂色でした。渋めです。会場周辺は卒業生・在校生・親御さんやその他色々な関係者でごった返していました。万感の思いに浸る多くの同期の中で筆者は心ここにあらずだったことを思い出します。いやだってなにしろ旅立たないので。もうちっとだけ続くんじゃ的な身分なので。
 

新入生ガイダンス

 
2015年3月28日。大学院人間科学研究科に入学するほぼすべての新入生が都の西北たる所沢キャンパス(通称:とこキャン)に集いました。今こそ母校との契りを確かめるときです。 もちろん筆者もわざわざ所沢まで行きました。これで生涯10回目くらいのキャンパス訪問です。それにしても感涙の卒業式から中1日で出席必須イベントを押し込んでくるとは。羽ばたく卒業生に感化されて高飛びする隙は与えない。辞めるなら学費を納めてから辞めなさい。などという大学側の強い意向を感じます。ほんとによく決断してしまったものですわ。
 

大学院のカリキュラム

 
さて。ここではせっかくなので早稲田大学大学院人間科学研究科のカリキュラムについて基本的なところのみ説明してみます。その道に詳しい方は率先して読み飛ばしてください。
 
大学院の課程は大きく分けて「修士課程(2年制、一部コースは1年制)」と「博士後期課程」に分かれます。それぞれ修了によって「修士(Master)」「博士(Doctor)」の学位を得ることになります。ちなみにいわゆる「大学(学部)」を卒業することで得られる学位は「学士(Bachelor)」です。eスクールを含む人間科学部を卒業した場合の学位は「学士(人間科学)」となります。以後は筆者が入学する「修士課程2年制」に絞って説明します。加えて以後は大学(学部)時代のことを「学部」あるいは「学部時代」と書くことにします。一方で単に大学と書く場合は学部や大学院を包含する意味合いとします。
 
修士課程の修了における必要単位数は「30」です。都合2年(通算4期)で30ですから1期あたり「7~8」で十分ということになります。eスクール序盤の狂瀾怒濤と比較すれば穏やかなスケジュールとなりそうな予感です。加えて大学院にはeスクールのようなフルオンデマンド科目が多数存在しています。言わば大学院は通学と通信のベストミックスと言えるでしょう。なんだ結構楽勝っぽくね?
 
一方で学部時代と異なるのは科目の大きさ(コマ数)です。大学院で設置されている科目は多くがハーフセメスター(1単位科目・8コマ)となっています。eスクールでは説明を端折るほどレアな存在だった1単位科目が大学院では主力です。ですので必要単位数が7だとすれば必要科目数も7と考える方が安全です(2単位科目(15コマ)も存在しています)。あれれやっぱりちょっと大変そうな気がしてきました。とはいえそれでも「1年で(ゼミ込みで)15単位」と思うとそんなに重労働ではない・・・ようにも思えます。
 
続いて科目の種類です。eスクールや学部と同様に大学院にも必修科目や専門科目といった区分けが存在します。一覧を書きますと・・・
 
研究指導
修士論文
必修専門ゼミ(1)   最低4単位(A・B)
必修専門ゼミ(2)   最低4単位(A・B)
選択専門ゼミ(1)   選択★
選択専門ゼミ(2)   選択★
専門科目A群       最低2単位★
専門科目B群       最低2単位★
プロジェクト科目    最低1単位★
リテラシー科目(英語) 最低1単位★
リテラシー科目(基礎) 選択★
他箇所設置科目     選択
※★がついた科目群を合計して最低12単位
※全科目中オンデマンド科目は上限15単位(いずれも2015年時点)
 
んんん?急に複雑になりましたね。ここでこの説明に時間を掛けると加速度的に読者が離れてしまいますので今はまあこういうものだと適当に思っておいてください。他の何を差し置いてもとりあえず大切なことはただひとつ。
 
「大学院は研究を行うところ(by上野先生)」
 
この認識を忘れないことです。そしてその研究を実践・遂行するために主軸となるのがゼミです。ゼミこそ研究そのもの。ゼミこそ大学院そのもの・・・なのです。
 
新入生ガイダンスではそういった主旨の(実際は遥かに精確な)説明が行われました。いや寝てませんよ。寝てませんって。ただ学部長の湯本先生(仮名)の声が心地良かっただけですって。
 

改めて、大学院入学式

 
そしてまた時計は4月2日に戻ってきました。詳しく分かりませんが早稲田大学では学部入学式を学部ごとの開催としているようです。しかし大学院入学式は全学一括開催でした。単純に全学の新大学院生を集めてもそこまでの人数にならないからなのでしょう。
 
入学式での筆者のテンションは卒業式とは打って変わって高いものでした。少なくとも桜並木の下を歩いていたくらいまではそうでした。いやーそれにしても大学院生ですよ。Undergraduate SchoolではなくGraduate Schoolです。アンダーじゃないんです。てことはもう選抜メンバーみたいなもんじゃないですか。いやー参りました。ちなみに修士課程1年目のことを気取って「M1(エムいち)」と言うそうですよ。どうもM1です。グランプリには出ませんけどなんつって。
 
・・・気づかないようにしていたのです。自分すごいぞって暗示をかけると視野って狭くなりますからね。しかしもう限界でした。少しでも油断して状況を俯瞰したとき目に入る人々。それはつい数日前まで大学4年生であった「同期」の新入生達でした。
 
彼らは総じて目映いばかりの黄色い砂煙に包まれていました。それこそほんの数日前まで卒業旅行で羽目を外していたような雰囲気です。あるいはサークルか何かに入り浸って「あざーす」とか自然と口走るようないけすかない野郎も居ることでしょう。もしくはカップルで温泉旅行に赴いて「いつまでも一緒だよ」などと貸し切り露天風呂の中でのぼせるまで見つめ合っていたような不届きな輩も混じっているに違いありません。主語を言わなくても通じる日本語って本当にいいものですね。
 
おっと。殺意がこぼれそうになりましたので話を戻します。社会人学生として現役バリバリの学生と相まみえたことは初めてではありません。ただそのときは先生による統制が作用していたゼミ時間内でした。そのときと比較して今は彼らの素の圧力がにじみ出ています。それどころか今にも狩りを始めそうな眼をしている者も居ます。なんでそんないつも不機嫌なんでしょうか。虫歯でも痛むのでしょうか。明々白々で言うまでもないことを今更ながら書きましょう。これからの院生生活ではおそらくそんな彼らとがっつりと対峙しなければならないのです。
 
とはいえ当然ながら彼ら(若者)には何も罪はありません。しかし彼らのオーラは社会人院生たる筆者にeスクール時代と異なる孤独が待っていることを強く予期させたのでした。入ったはいいけれど本当にゴールまでたどり着けるのでしょうか。そもそも彼らときちんと理解りあえるのでしょうか。趣味の悪い自己暗示が現実感に押しつぶされる直前に入学式は終了しました。なにがM1だって話ですよ。だって周りみんなM1なんですから。しかもかなり活きの良い。
 
式終了後は混雑を避けるために早めに早稲田駅へ向かいました。とはいえ入学式特有の乾いた喧噪から離れた帰路において筆者のテンションはじわりと再浮上していました。そうさせてくれたのは純粋なる今後への希望でした。学校という組織があまり得意ではない筆者をしてその感覚もまた初めてのものでした。道中色々あったとしてもきっといつか来てよかったなと思える日が来る。eスクールもそうやってひとつずつ乗り越えてきたじゃないか。
 
ささやかな喜びをつぶれるほど抱きしめて始まったM1初日でした。
 

M1スタート

 
そして入学式から一週間後の2015年4月9日。院生として初めてのゼミ(大学院ゼミ・以降「院ゼミ」)が始まります。院ゼミの時間は木曜の「3・4時限」です。場所はやはり所沢キャンパスの上野ゼミ・ゼミ室です。もう何度も書いていますが筆者の現住地からは電車を乗り継いでだいたい3時間程度です。これでたぶん両手の指では収まらないくらいの所沢訪問体験です。筆者が入室した後ほどなくして上野先生と他の参加者(助手・院生)が揃いました。
 
えーとごめんなさい。ここちょっと嘘をついてしまいました。そういえば大学院生としての初めてのゼミはこの日ではありませんでした。ここで院ゼミ初回の上野先生の最初の発言を引用してみます。
 
「えー、では、火曜の学部ゼミの運営についてだけど・・・」
 
たぶん想像した以上に騒がしい未来が待っている。
 
 
 
 
 
 
参考
早稲田大学大学院人間科学研究科要項(歴代)https://www.waseda.jp/tokorozawa/kg/human-graduate/guide_gh.html
要項は毎年のように変わっています。このコラムでは筆者が所属した年のものを用いています。これからご入学の皆さまはくれぐれも入学年の要項を確認するようにお願いいたします。驚くほど毎年細かく変わっています。
 
早稲田大学人間科学部eスクール「よくある質問」